こんにちは、lye-1988です。「なるべく毎日」と言っておきながら久しぶりの更新です(汗)
早速ですが本日のフェルミ推定問題「全国の自動販売機の数はどれくらいか?」について考えていきましょう。
【1】求められている対象の確認(4W1Hで求められている対象を整理します)
- Where(どこの) :全国とありますので、「日本国内の」となります。
- When(いつの) :特に指定はないため「現在の」とします。
- Which(どの) :特に指定されているわけではないですが、意味を広げると、お菓子・カップ麺・タバコなどの自動販売機も含まれてしまいます。そのため、今回は一般的に想定される「飲料用の」自動販売機に限定したいと思います。
- What(何を) :「自動販売機を」で良いでしょう。
- How(どのように):特に指定はありません。
【2】アプローチ方法と式のアウトラインの決定(どのようにして対象を求めるのか大枠を決定します)
アプローチの際は、求める数と相関のある事象(原因・結果)に注目することがポイントです。今回は、原因となる供給者側の事情と、結果となる消費者側の事情を掛け合わせてアプローチしていきます(アプローチ方法はもちろん複数あります)。
まず大枠としては、次のようになります。
【全国の自動販売機の数】=【全国の自動販売機の総利用回数】÷【自動販売機1台当たりの利用回数】
このうち、【全国の自動販売機総利用回数】は消費者側をベースに求めていき、【自動販売機1台当たりの利用回数】については、供給者側をベースに求めていきます。
【3】項目分解と詳細な式の決定(アウトラインで出てきた各項目を求めるために、より詳細な式を設定します)
(1)【全国の自動販売機の総利用回数】(1か月当たり)を求めます。
【全国の自動販売機の総利用回数】=【全国民の数】×【全国民のうち自動販売機利用者の割合】×【1利用者あたりの自動販売機利用頻度】×【1か月】
上記を求めるために下記の仮定を置きます。
- (仮定1)全国民の数⇒1億2千万人(概数で簡略化)
- (仮定2)全国民は家庭中心の生活をする人と、外出中心の生活をする人に分けられ、家庭中心の生活をする人は、自動販売機よりもスーパーなどで飲料を購入するため、自動販売機を利用しない層と仮定する。
- (仮定3)国民の人口構成を典型的な6人家族構成(子ども2人=学生2人、母=主婦、父=会社員、祖父母=2人)モデルで考えた場合、母と祖父母が家庭中心、子どもと父が外出中心となるため、全国民の半分が家庭中心の生活をすると仮定する。
- (仮定4)外出中心の層の中でも、自動販売機の利用をしない層がおり、その理由別に、①「自動販売機の値段が高い」②「食事の時以外あまり飲料を口にしない」③「自動販売機に飲みたい飲料が置いてない」の3タイプがいると考えられる。このうち、①は外出層の3割、②は外出層の2割、③は外出層の1割を占めると考えられる。
- (仮定5)食事の時以外で飲料を欲する回数は1日2回程度(午前・午後)と想定され、そのうち1回分はコンビニなど代替手段で飲料を手に入れていると考えられるため、1利用者あたりの自動販売機の平均的な利用頻度は1日1回と仮定する。
- (仮定6)1か月⇒30日(簡略化)
また、2~4の仮定より、全国民のうち自動販売機利用者の割合は(1×0.5×0.4=)20%となります。
(2)【自動販売機1台当たりの利用回数】(1か月当たり)を求めます。
【自動販売機1台当たりの利用回数(x)】=【1台当たりの売上】÷【売上単価】
上記を求めるために下記仮定を置きます。
- (仮定1)自動販売機の製造・設置など初期費用がかかるため、自動販売機の供給者は一定程度の収益性を見込んだ上で設置を行なっており(売上利益率10%)、実際に見込んだ通りの収益性を実現していると仮定する。
仮定1より、下記の式が成り立ちます。
【売上利益率】=(【1台当たりの売上】–【1台当たりのコスト】)÷【1台当たりの売上】=1/10
- (仮定2)自動販売機の売上単価⇒150円
- (仮定3)自動販売機のコストは初期費用(機械購入・設置費用)と、運用費用(電気代、土地代、飲料の補充費用)に分かれる。
- (仮定4)機械購入・設置には1回当たり50万かかるとし、1回の購入で5年間使えると仮定する。
- (仮定5)運用費にあたる電気代、土地代はそれぞれ月千円かかるとし、飲料の補充費用は飲料1本当たり50円とする。
- (仮定6)飲料の補充は購入により消費した分だけ行なうとする。
以上より、【1台当たりの売上】と【1台当たりのコスト】は下記のようになります。
【1台当たりの売上】=【1台当たりの利用回数】×【売上単価】=150x円
【1台当たりのコスト】=【初期費用月割り分】+【運用費用】=(50万÷5年÷12か月)+(1000+1000+50x)≒(10000+50x)円
以上で計算に必要な式の要素は全て出揃いました。
【4】計算実行(今までに組み立てた式をもとに、答えを求めます)
【全国の自動販売機の総利用回数】=【全国民の数】×【全国民のうち自動販売機利用者の割合】×【1利用者あたりの自動販売機利用頻度】×【1か月】=1億2千万×0.2×1回×30日=7億2千万回
【売上利益率】=1/10=(【1台当たりの売上】–【1台当たりのコスト】)÷【1台当たりの売上】=(150x-(10000+50x))÷150x ⇒ x≒120
【全国の自動販売機の数】=【全国の自動販売機の総利用回数】÷【自動販売機1台当たりの利用回数】=7億2千万回÷120回=600万台
よって答えは600万台と計算されます。
【5】現実性検証(実際の数値と照らし合わせます)
一般社団法人日本自動販売機工業会による2013年度のデータによると、飲料自動販売機の普及台数は259万台ということで、倍以上の開きとなりました。
ではどこでずれが生じたのでしょうか。
データの売上と普及台数より、自動販売機1台1か月当たりの売上は7万2千円に上り、単価150円とした場合の1台1か月当たりの利用回数は500回近くになっています。1台当たりの売上・利用回数をかなり低く見積もってしまっていたようです。
また、飲料自動販売機は年間2兆円の市場(単価150円とした場合の月間利用回数12億5千万回)であったため、利用者の割合もしくは利用頻度にもずれがあったようです。
私見ですが今回の問題は難しかったです。皆さんはいかがでしたか?